©︎山口 浩平
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アートウィーク東京 2025

スイス大使公邸でレセプションを開催

約160名のアート・クリエイティブ業界関係者が参加。小㞍健太氏と鳴海令那氏によるダンス・パフォーマンスも披露

11月7日、ロジェ・ドゥバッハ駐日スイス大使およびイングリッド・ドゥバッハ = ルマンク大使夫人が、大使公邸にてディナー・レセプションを開催し、150名を超えるコレクター、アーティスト、美術館関係者、政府関係者、そしてクリエイティブ業界の方々を迎え、アートウィーク東京(AWT)の成功を共に祝いました。

AWTは、一般社団法人コンテンポラリーアートプラットフォームがアート・バーゼルと提携し、文化庁および東京都の協力を受けて一年に一度開催される、東京の現代アートの多様性と創造性を紹介するアートイベントです。本レセプションは、AWTの公式VIPプログラムの一環として行われ、AWT共同代表理事である白井一成氏および蜷川敦子氏、AWT FOCUSの監修を務めたアダム・シムジック氏、文化庁の代表者、国内外の主要ギャラリー・美術館関係者などが出席しました。

この夜を彩ったのは、小㞍健太氏(Vitality.Swissアンバサダー/ローザンヌ国際バレエコンクール受賞者)と鳴海令那氏による《Engawa, Imaginary Landscapes》の特別プレビュー公演でした。日本の伝統的な建築要素である「縁側」――内と外が交わる空間――に着想を得た本作は、身体と建築のあいだに生まれる詩的な対話を、動き・空間・感情を通して描き出しました。このシリーズは2023年から小㞍氏と建築家ハネス・マイヤー氏との協働によって展開されています。両者は2022年のあいちトリエンナーレで展開した在日スイス大使館のプロジェクトを通じて出会いました。今回の上演ではスイス大使公邸の庭園が特別な照明演出に包まれ、幻想的な余韻のうちに、公演は幕を閉じました。作品の音楽は、当日DJとしても多彩な選曲で会場を盛り上げたタツキアマノ氏が手掛けたオリジナル楽曲です。

ディナーのメニューもまた、スイスと日本の友情を象徴するものでした。ミシュラン一つ星シェフの野田達也氏とスイス大使公邸専属シェフのダニエル・クチェット氏の協働により、「再生的(リジェネラティブ)な食体験」として両国の感性を融合。椎茸とグリュイエールチーズの出会い、抹茶とスイスチョコレートの競演など、独自の工夫が凝らされ、持続可能かつ地元食材を活かした「未来の食卓」が演出されました。さらに、寿司職人・泉澤雅也氏による「Vegetable Sushi by 雅び(MIYABI)」が彩りを添え、会場をいっそう華やかに盛り上げました。

ドゥバッハ大使は冒頭の挨拶で次のように述べました。「スイスは、芸術を愛する人々、コレクター、活気ある文化施設に恵まれ、多くの芸術家が拠点を構える国であり、もちろん優れたアートフェアやアートフェスティバルも数多く開催される国です。こうした背景を踏まえ、私たちはこのディナー・レセプションを通じて、素晴らしいアートウィーク東京のプログラムに参加させていただくことにしました」。また本イベントはスイス政府観光局との協力により実施されました。

Artistic & Culinary Talents

小㞍健太 Kojiri Kenta
振付家・ダンサー。変容する身体の「いま」を見つめ、記憶へと変わる感覚を表現の核とする。ローザンヌ国際バレエコンクール受賞後、モナコ公国モンテカルロバレエ団、ネザーランド・ダンス・シアターに在籍。退団後はフリーランスとして活動。2017年にSandD(サンド)を立ち上げ、近年はパリ日本文化会館やフランス国立ダンスセンターに招聘される。大阪・関西万博、ミュージカル『エリザベート』、フィギュアスケートとのコラボレーションも手がける。現在、横浜赤レンガ倉庫1号館振付家。あいちトリエンナーレ2022「Kizuki-au 築き合う— Collaborative Construction」でスイス大使館と協働。2022年からは Vitality.Swiss アンバサダーを務める。

鳴海令那 Rena Narumi
15歳よりフランス、カナダにてバレエ、コンテンポラリーダンスを学ぶ。これまでにドイツウィースバーデン州立劇場、スウェーデン王立バレエ団、ネザーランド・ダンス・シアターに所属し、世界で活躍する振付家の作品に多く出演。マッツ・エック版 『Juliet&Romeo』(ジュリエット役)でロンドン、ドイツ、パリ・オペラ座ガルニエ宮で主演公演。2014年に行われたノー ベル賞晩餐会でデュエットを披露。現在は世界が注目する振付家クリスタル・パイト率いる Kidd Pivotのメンバーとして活動。

野田達也 Tatsuya Noda
半導体エンジニアから料理人へ転向。都内フレンチレストランを経て2012年に渡仏。当時ミシュラン二つ星「Passage 53」の佐藤伸一氏(現:Restaurant Blanc Paris)の薫陶を受け研鑽を積む。帰国後、国内外のシェフやアーティストとのコラボレーションやカリナリーイベントのオーガナイズを務める。フリーランスの料理人として活動する一方で日本橋・馬喰町の「nôl(ノル)」ディレクターとして、22年よりミシュラン一つ星を4年連続で獲得。24年・25年にはミシュラングリーンスター(サステナブルなガストロノミーに贈られる評価)の受賞へと導く。25年より、GIC Tokyo(Gastronomy Innovation Campus Tokyo)のガストロノミーアドバイザー、および併設するInnovative Kitchen 8go(エゴ)のカリナリーコネクターに就任。食と医療、アート、テクノロジーなど、多分野の垣根を越えた共創を通じて、「新たな美味しさの創出」をテーマに活動している。

ダニエル・クチェット:
在日スイス大使公邸のシェフを務めるダニエル・クチェットは、2025年の就任以来、新しい技法と新鮮な視点をスイス料理にもたらす新鋭として期待されている。洗練されつつも親しみやすい料理を生み出している。

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ストーリーのカバー:
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