スイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団と在日スイス大使館によるプログラムDesign with Japanの一環として、スイスのデザイナー ノエラーニ・ルッツ (Noelani Rutz)と アンソニー・ゲ (Anthony Guex)が2024年11月、岐阜県多治見市に3週間滞在し制作を行いました。1300年以上の陶磁器の伝統を持つこの地で、多治見のメーカーと協働した成果が、2025年10月10日から19日まで渋谷で開催された展覧会 Shared Ground(シェアード・グラウンド・共創の場) で披露されました。
Shared Ground — 伝統とデザインの対話
多治見市は、歴史ある美濃地区に位置し、古くから陶磁器生産と実験の中心地として知られています。良質な陶土と自然水に恵まれたこの地域の歴史的背景は、現在も多治見の独自性を形づくり、世界中のデザインとの協働に影響を与えています。
Shared Ground (共創の場) という概念のもと、本展覧会では、地元の職人と国際的デザイナーが文化や国境を越えて協働することで、過去と現在、東洋と西洋、手仕事とテクノロジーをつなぐ交差点となっている多治見に注目しました。
2025年10月10日~19日、Shared Ground は2つの相補的な展示を開催しました。CIRCLEではノエラーニ・ルッツとアンソニー・ゲによる「Design with Japan」を、隣接する(Place)by methodではTajimi Custom Tilesによる「Tile Works」を紹介。国際的デザイナーが地域パートナーと共に展開したプロジェクト、作品、プロトタイプ、製品が並びました。それらは、日本の陶磁器文化とスイスをはじめとする現代デザインとの対話を体現しています。
10日間の会期中に500名以上の来場者が、文化を越えた継続的な対話から生まれる、素材、持続可能性、造形における新たな可能性を体験しました。
Design with Japan — ノエラーニ・ルッツ & アンソニー・ゲ
本展は、スイス人デザイナーと岐阜県の地元メーカーによる1年間にわたる協働の集大成として開催されました。
ノエラーニ・ルッツとアンソニー・ゲは、日本の伝統とスイスの現代デザインを融合させた、詩的で彫刻的なプロトタイプを発表しました。
本展は、在日スイス大使館およびスイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団の主催により、Tajimi Custom Tiles、株式会社深山、method inc. との協働で開催されました。スイス連邦外務省 プレゼンス・スイスの支援を受け、クリエーション バウマン ジャパン株式会社、ソノヴァ・ジャパン株式会社、USM U. シェアラー・ソンズ株式会社の協賛によって実現しました。
《Fleeting Landscapes》 &《 Tile Shelving System》 — ノエラーニ・ルッツ
スイスと日本の冬景色をつなぐ作品《Fleeting Landscapes》は、雪の記憶の中での不変性と現実での儚さという二面性を探求します。杉浦製陶株式会社と協働し、この儚いモチーフを、粘土を用いて、雪の一瞬の美しさを永続させる陶磁器タイルのシリーズへと昇華させました。
《 Tile Shelving System》では、地元産の土を使用し、L字型に押し出して素焼きのまま仕上げ、土の色味や焼成による微細な濃淡をあえて残しています。有限会社丸仙化学工業所 寿山と協働のもと、素材本来の力強さをと建築的な洗練さを両立させる手法を実現させています。
ノエラーニ・ルッツ
チューリヒを拠点に活動するスイスのプロダクトデザイナー。ECAL/ローザンヌ美術大学を優秀な成績で卒業後、同校で2年間教務アシスタントとして勤務。shigeki fujishiro design(東京)、Jörg Boner productdesign( チューリヒ)で経験を積んだ後、自身の制作活動に専念。伝統工芸、素材研究、実践的な解決手法の融合を得意とする。@noelanirutz https://noelanirutz.com/
《茶器一式》— アンソニー・ゲ
著名なメーカー株式会社深山との協働により、従来の磁器の概念を刷新する茶器一式を制作。従来は繊細で薄いものと見なされてきた磁器に、密度、体積、彫刻的形態を取り入れました。そぎ落とされた形状でありながら建築的なデザインの各ピースは、強さと優雅さの均衡を保ち、スイスの精密さと日本の職人技を融合させています。
アンソニー・ゲ
ローザンヌを拠点に活動するスイスのプロダクト・インテリアデザイナー。プロダクト、家具、インテリアデザインを中心に手掛ける。木工業界でのキャビネット職人および現場監督として7年以上の経験を積んだ後、ジュネーヴのジュネーブ造形芸術大学(HEAD) でインテリアデザインを学び、2015年に ECAL/ローザンヌ美術大学でプロダクトデザイン修士号を取得。現在は自身のデザインスタジオおよびECAL副担当官として活動。@anthonyguex https://anthonyguex.ch/
プログラムについて — スイスと日本をつなぐ架け橋
Design with Japanは、スイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団が在日スイス大使館と連携して実施する協働プログラムです。本事業は、スイスの新進デザイナーと日本の製造者を結びつけ、実験的な試み、持続可能な生産、知識交換を促進するとともに、デザインの可能性を広げる文化横断的な環境を育みます。この協働は、一連のプロトタイプ開発、プロジェクト展示、メディア発信を通じて形になります。
Design with Japanは、信頼と協働の精神のもと、関係者全員が一堂に会して具体的なプロジェクトを実現できる、価値あるプログラムであることが示されました。
第1回のプログラムは終了しましたが、2025~2026年には多治見にGini MoynierとStudio Carolien Nieblingという新たな2つのスタジオを迎え、デザインと職人技を通じて両国の結びつきをさらに強化していきます。
詳細: https://vitality.swiss/ja/calendar/2025/shared-ground
Design with Japan 2024~2025年
選考委員
- 松澤剛(株式会社E&Y 代表取締役・大阪芸術大学短期大学部デザイン美術学科教授・グッドデザイン賞審査員)
- ダヴィッド・グレットリ(クリエイティブ・ディレクター、デザイナー)
- レティシア・デ・アレグリ(デザイナー)
キュレーター・メンター:ダヴィッド・グレットリ、マリー・マヨリ
プロジェクトリード・キュレーション:イレーネ・山口
グラフィックデザイン:セバスチャン・フェア
写真:長谷川健太
PR:竹形尚子(デイリープレス
主催:スイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団 、在日スイス大使館
協力:Tajimi Custom Tiles、株式会社ミヤマ、method Inc. Tajimi Custom Tiles、株式会社深山、method inc.
支援:スイス連邦外務省 プレゼンス・スイ
協賛:クリエーション バウマン ジャパン株式会社、ソノヴァ・ジャパン株式会社、USM U. シェアラー・ソンズ株式会社