アメリカ、パリを経てベルンを永住の地とした、今年生誕100年を迎えた日本人女性画家・横井照子(1924–2020)。横井は、念願だったベルン美術館での回顧展が幕を閉じた直後に永眠します。その軌跡を描いた里信邦子スピリグ監督・制作のドキュメンタリー作品『画家・横井照子の表現世界』の上映がスイス大使公邸で10月23日に行われました。
スイスで活躍する美術史家、映像作家、ジャーナリストである里信邦子スピリグが監督・プロデューサーを務めたドキュメンタリー作品『画家・横井照子の表現世界』(スイス / 2024年制作 / カラー / 50分 / 言語:英語 / 字幕:英語、フランス語、ドイツ語、日本語)が、スイスと日本の国交樹立160周年を記念する「Swiss Vitality Days」の一環として、2024年10月23日にスイス大使公邸で上映されました。この上映会では、監督自身も登壇し、参加者との交流が行われました。
本作品では、里信監督が横井作品の芸術性を美しく紐解き、監督自身と重なる「海外で生きる日本人女性アーティスト」の軌跡も描き出しています。日本への望郷の念を抱きつつ海外で暮らし、生涯をかけて自分の芸術を追い求めた抽象画家・横井照子。彼女の知られざる作品が、里信監督の鋭い美術史的な視点を通じて解き明かされ、まるで新たな命が吹き込まれたかのように映し出されています。観客たちは、横井と監督が紡ぐその世界に深く引き込まれました。
上映後のトークセッションでは、美術批評家のイングリッド・ドゥバッハ=ルマンク氏を聞き手に、横井照子の作品が持つ芸術的価値について議論が展開されました。里信監督と横井氏との出会いや、ドキュメンタリー制作の背景、さらにはスイスで生活した二人の共通点についても触れられ、聴衆は自分自身の経験と重ね合わせて深い共感を示していました。
また、2024年12月5日(欧州)、2025年1月末(日本)にSheidegger & Spiess出版社より発売予定の著書『横井照子 花咲くモチーフたち』では、里信監督によるさらに詳細な批評が収められています。ぜひご期待ください。
今後の上映予定や書籍の販売情報、また里信邦子スピリグの最新の活動については、公式ウェブサイトでご確認いただけます。本作品の展開と、今後の里信監督の活動にどうぞご注目ください!
『画家・横井照子の表現世界』監督:里信邦子スピリグ
スイス / 2024年制作 / カラー/ 50分 / 言語・英語 / 字幕・英語、仏語、独語、日本語
あらすじ
横井照子 (1924 – 2020) は、抽象絵画を学ぶためアメリカに渡り、その後パリを経て最終の仕事場をスイス・ベルンに定めたスイス・日本人画家。2020年1月、横井が長年夢見た回顧展がベルン美術館で開催された。95歳の時である。そして、この展覧会が幕を閉じた数週間後、永遠の眠りにつく。この映画は、外国人でシングルマザー、有名な画家の夫(サム・フランシス)の影に隠れがちといった様々な困難にもめげず、「画家として生きる」という意志を貫いた1人の女性画家の一生を見つめ、同時に「余白」や書の導入といった日本絵画の技法とアメリカ抽象表現主義が合わさった表現を見せながら、横井の魅力あふれる作品世界に誘う。詳細はこちら
監督・プロデューサー: 里信邦子スピリグ
スイス・日本の美術史家、映像作家、ジャーナリストとしてスイスで活躍。横井照子のドキュメンタリーは、彼女の2作目の作品。1作目は、NHKの共同監督としてローザンヌ国際バレエコンクールについてのドキュメンタリー「ローザンヌでつかんだ未来 – バレエダンサー須弥奈と美桜 –」を制作した。詳細はこちら
上映会&トーク『画家・横井照子の表現世界』里信邦子スピリグ監督
●日時:2024年10月23日(水)
●会場:大使公邸(東京都港区南麻布5-9-12)
●プログラム:
18:00 開場
18:30 ロジェ・ドゥバッハ次期駐日スイス大使による挨拶
18:35 『画家・横井照子の表現世界』上映
19:25 里信邦子スピリグ監督 トーク 聞き手:イングリッド ドゥバッハ = ルマンク(美術批評家・スイス)
20:00 カクテルレセプション
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ストーリーのカバー:
Photo by Ayako Suzuki