謎めいてときに痛ましく、けれどもあくまでエレガントな線と形で紡がれる心象世界。スイス現代美術の「今」を体現する作家イヴ・ネッツハマー(1970-)は、通常の語りの論理を超えて展開するデジタル・アニメーションの映像に、自動機械など風変わりなオブジェを掛け合わせ、世界の起源や自己の根拠をめぐる問いが忘却の淵に押しやられながらもなお明滅する領域を、繊細に描き出してきました。日本で初めての個展となる今回の展示では、これまでの代表的な映像作品を紹介するとともに、宇都宮で現地制作する大規模な新作インスタレーションを披露します。
展示会について
スイス現代美術を代表する映像インスタレーション作家、イヴ・ネッツハマー(1970- )は、デジタル・アニメーションの無言劇に風変わりなオブジェを掛け合わせ、理不尽に苛まれながらも世界や自己の霧散しかけた根拠をめぐってさまよう者の姿を、繊細に描き出してきました。
見えない空気のざわめきをひそやかな震えへと翻訳する木々の葉たちの呼びかけのように、作品が置かれる土地や建物の、記憶の奥にゆらめくもの。触れかかるその影にネッツハマーが感応するとき、作中にしばしば現れるのが、深層へと潜る、特徴的な身振りです。
日本で最初の個展となる本展は、「潜る人」ネッツハマーと、大谷石採掘場という巨大な地下空洞を宿す街、宇都宮との出会いから生まれました。宇都宮美術館は、これまでの代表的な映像作品を紹介するとともに、現地で制作する大がかりな新作インスタレーションを披露します。単館開催につき宇都宮でしかご覧いただけない光景をぜひご堪能ください。
アーティストについて
2007年第52回ヴェネチア・ビエンナーレ、2008年サンフランシスコ近代美術館(SFMOMA)、2009年ストロッツィ宮殿、2010年リバプール・ビエンナーレ、2012年上海民生現代美術館、2012年ベルン美術館、2013年タスマニアのMONA美術館、2015年Kievインターナショナルビエンナーレ、2016年ヴェストファーレン美術館のアトリウムのインスタレーション、2014年リートベルク美術館、2017年上海の復星芸術センターでの個展など、彼の作品は国際的に広く認められています。スイスにおいては、近年、シャフハウゼンのアラーハイリゲン・ミュージアム(2018/19)、ETH(スイス連邦工科大学)グラフィックアート・コレクション(2020)、ハウス・コンストルクティヴ美術館(2022/23)で作品を発表しました。
ストーリーのカバー:
©Yves Netzhammer