Swiss Cinema Days -ドキュメンタリー試写会「Umi No Oya - 海の親」 image
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Swiss Cinema Days -ドキュメンタリー試写会「Umi No Oya - 海の親」

スイス人アーティストで料理人のマヤ・ミンダー(Maya Minder)と作家でキュレーターのエベン・シャルドロネ(Ewen Chardronnet)によるドキュメンタリー・エッセイ「Umi No Oya - 海の親」の試写会が10月11日に東京のSHIBAURA HOUSEで開催されました。エコロジーの転換期における藻類の可能性を探る本作を観るために、アート、食、サイエンス等の各分野から意欲的な聴衆が集まり、会場は熱気に包まれました。

Vitality.Swissのアンバサダーであるマヤ・ミンダーとスイス大使館が2023年から推進しているMICUL×MICULプロジェクトでは、藻や海藻を使用したレシピを広く募集し、これらの食材が秘める未来の可能性に光を当てています。マヤ・ミンダーとエベン・シャルドロネの日本での研究が、このたびドキュメンタリー・エッセイ「Umi No Oya - 海の親」として試写発表されました。

Umi no Oya, 2024, Ewen Chardronnet and Maya Minder
Umi no Oya, 2024, Ewen Chardronnet and Maya Minder

本作は、1949年に紅藻類のライフサイクルに関する重要な科学的発見を行い、戦後の日本における海苔養殖の発展に貢献したイギリスの藻類学者キャサリン・ドリュー・ベーカーの遺産を巡るドキュメンタリーです。「海の親」として称えられているドリューが戦後の九州に与えた影響を讃えつつ、気候変動という新たな試練に立ち向かうためのレジリエンスへのインスピレーションを本作では探求しています。2023年のMICUL×MICULワークショップの開催地であり、本作にも登場するSHIBAURA HOUSEでの試写会には、アート、食、サイエンスの各分野から意欲的な聴衆が集まり、会場は熱気に包まれました。

試写に先立ち、主催者であるロジェ・ドゥバッハ次期駐日スイス大使とSHIBAURA HOUSE代表取締役の伊東勝氏から、2023年から続く本プロジェクトとの協働を称賛する言葉がありました。また、本作の成果を祝うとともに、今後への大きな期待が表明されました。

約60分のドキュメンタリーを鑑賞した聴衆からは、スイスとフランス出身の制作者が日本の「海苔」文化に注目した理由や、監督とアーティストの海や海藻との出会い、さらには気候変動に伴う海苔の生産量の減少に関する熱心な質問が寄せられました。また、会場では株式会社山本海苔店から提供された焼き海苔が振る舞われ、上映後、参加者たちは焼き海苔を楽しみながら、海苔にまつわる談義に花を咲かせていました。なお、山本海苔店の代表取締役社長、山本貴大氏は、本作品内で日本の海苔産業とその歴史について解説されています。

マヤ・ミンダーとエベン・シャルドロネの旅は、まだまだ続きます。12月には再び日本で活動をする予定です。どうぞ二人の活動にご注目ください!

Umi No Oya - 海の親

Ewen Chardronnet & Maya Minder, 2024, 63’

日本の南部、宇土半島の付け根、住吉自然公園内の神社の近くに石碑がある。碑に描かれているのは、ボタンダウンシャツを着て、眼鏡をかけた中年女性の横顔で、その視線はまるで海を見守るかのように、少し上の遠くのほうに注がれている。肖像の下には「IN MEMORY OF MADAME KATHLEEN MARY DREW, D. Sc.(キャサリン・ドゥルー・ベーカー女史を偲んで)」と刻まれている。日本に一度も足を踏み入れることなく、1957年に56歳で亡くなった英国の藻類学者である。

1930年代から海苔などのヨーロッパの紅藻類を丹念に研究していたキャサリン・ドゥルー・ベーカー博士は、1949年に海苔の胞子が牡蠣の殻に巣をつくることを発見した。彼女はその発見について、科学ジャーナル『ネイチャー』誌で論文を発表し、熊本の海洋植物学者、瀬川宗吉に知らせ、それを聞いた太田扶桑男がこの技術を有明海の海苔養殖業者に広めた。有明海の海苔生産量は数年のうちに著しく立ち直り、その後数十年で海苔産業はピークに達することになった。

1963年以来、住吉自然公園にある記念碑は、解明されていなかった海苔のライフサイクルを最初に発見したキャサリン・ドゥルー・ベーカー博士を記念している。毎年夏、牡蠣殻に丁寧に海苔の胞子を植えつけているこの地域では、彼女は海苔養殖の生みの親(umi no oya)として知られている。英国の植物学者である彼女の功績を称え、毎年4月14日に神社でお祭りが開催されている。伝説的な彼女のことを「海の親(umi no oya)」または「(有明)海の母」と称する人がいるのも不思議ではない。

協力:アンテレ・ポー、ART2M、DDAコンテンポラリーアート、スイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団、在日スイス大使館 / Vitality.Swiss、スイスネックス・ジャパン、Biolab Tokyo、metaPhorest(早稲田大学)、ジュ・ド・ポーム国立美術館、欧州連合(EU)クリエイティブ・ヨーロッパ助成More-Than-Planetプログラム。

Swiss Cinema Days 「Umi No Oya - 海の親」試写会
日時:2024年10月11日 19時~
会場:SHIBAURA HOUSE(東京都港区芝浦3-15-4)

Swiss Cinema Days 協賛社

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