スイス人デザイナーのNoelani RutzとAnthony Guexのふたりが岐阜・多治見で過ごした3週間の創造と協働の旅。その後もオンラインで多治見の職人たちと紡いできた成果が、ついに展覧会として10月10日~19日まで東京渋谷のCIRCLE で初公開!文化とデザインが交差する、特別な体験をお見逃しなく。
Shared Ground
岐阜県の丘陵地、歴史ある美濃地区に位置する多治見は、1300年を超える陶磁器の伝統を育んできました。この文化的遺産は、地域に豊富に存在する良質な粘土層、水資源に根ざしており、それらは陶磁器の素材的特性としてだけでなく、この地域の文化的アイデンティティの形成にも大きな影響を与えてきました。
多治見は単なる生産地というだけではなく、地元の職人と国際的なデザイナーが出会い、協働する場でもあります。過去と現在、東洋と西洋、手仕事と技術をつなぐ、Shared ground(共創の場)です。
この秋、東京で、「Shared Ground(共創の場)」という総称のもと、変化をし続ける対話に多様な視点をもたらす二つのエキシビション「Design With Japan 」と「Tile Works」が同時に開催されます。会場では、多治見の製造業者や職人とデザイナーが協働して生み出したオブジェ、試作品、製品が紹介されます。これらの作品はどれも、伝統への深い敬意と実験への好奇心を反映しており、伝統産業を現代の生活に会う形で再解釈しようとする試みとなっています。
この展示は、国際的デザイナーが地元のパートナーと協働して生み出したプロジェクトを紹介する窓口となります。各展示作品は、新しい視点によって形作られながらも、多治見の時を超えた本質に根ざしており、伝統への相互の敬意と実験への共通の好奇心を体現しています。
Design with Japan by ノエラーニ・ルッツ & アンソニー・ゲクス
スイスのデザイナー、ノエラーニ・ルッツは、Tajimi Custom Tilesと提携し、地元のタイルメーカーと“雪”に着想を得た詩的なタイルシリーズとシェルフシステムを開発しました。このモチーフは、スイスと日本、両国の風景に共鳴しています。
アンソニー・ゲクスは、名高い食器メーカー と協働し、洗練されたテーブルウェアのコレクションを制作しました。日常の所作に根ざしたこれらの作品は、スイスのミニマリズムと日本の職人技を融合させ、フォルムと機能の調和を実現しています。
両デザイナーともDesign with Japanに参加しています。このプログラムは、スイスの新進のデザイナーと日本の製造業者とのつながりを築くことを目的とし、異文化間のコラボレーション環境を育むことで、デザインの可能性を押し広げることを目指しています。第1回は多治見で開催され、デザイナーと地元の製造業者が手を取り合いながらプロジェクトを展開しました。本プログラムは、在日スイス大使館およびスイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団が主催し、Tajimi Custom Tilesおよび多治見エリアのメーカーの協力のもと、実施されました。
本プログラムとふたりのこれまでの旅はこちら: Open Call 2024 , 2024年秋・多治見にて
展覧会概要
展覧会名 Shared Ground Design with Japan by Noelani Rutz & Anthony Guex
会期・開場時間 2025年10月10日(金)~10月19日(日)11:00 - 19:00
会場 CIRCLE (150-0011 東京都渋谷区東1-3-1 カミニート2F )
主催:在日スイス大使館、スイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団
協力:Tajimi Custom Tiles、株式会社深山、method inc. 、スイス連邦外務省 プレゼンス・スイス
協賛:クリエーション バウマン ジャパン株式会社、ソノヴァ・ジャパン株式会社、USM U. シェアラー・ソンズ株式会社
※Tajimi Custom Tilesは隣接のPLACE by method にて、「Tile Works」展を同時開催します。
2025年10月9日(木) プレスツアー&オープニングレセプション ※Tajimi Custom Tilesと合同開催 です
プレスツアー 16:00 – 17:30
オープニングレセプション 18:00 – 20:30
※ロジェ・ドゥバッハ駐日スイス大使および、展示デザイナーのノエラーニ・ルッツ 、 アンソニー・ゲクスも同席いたします。
ノエラーニ・ルッツ(Noelani Rutz)
スイス・チューリヒを拠点に活動するプロダクトデザイナー。shigeki fujishiro design(日本)、Jörg Boner productdesign(スイス)で経験を積み、2023 年に自身のスタジオをオープン。細部にわたるシンプルさに鋭い目を向ける実践的なアプローチは、伝統的な工芸品、素材の研究、実用的なソリューションを思慮深く組み合わせることを重視している。@noelanirutz https://noelanirutz.com/
Fleeting landscapes
スイスと日本の冬景色をつなぐこのプロジェクトは、雪がもつ二重の性質を探求するものです。雪は、記憶や文化の中では永続的でありながら、現実では儚い存在です。スイスと日本、その距離は離れていても、両地には深いつながりがあります。雪の一時的な存在を観察し、それに適応してきたという長い伝統があるのです。「Fleeting Landscapes(儚い風景)」は、雪の儚い特性を新しい素材に置き換えることで表現しています。温度や時間に耐える粘土は、形や質感の儚さを保つことができます。雪そのものを型取りした作品であれ、釉薬を通して観察を翻訳した作品であれ、このシリーズは雪の季節的・生態的な脆さや消えゆく存在を語り、変化を静かに思い起こさせます。
協働メーカー:杉浦杉浦製陶株式会社
1950年に岐阜県多治見市で創業された老舗タイルメーカーです。モザイクタイルの製造から始まり、美濃焼の技術を活かした高品質なタイルづくりを70年以上にわたり継承。約10万㎡の敷地にて企画から製造までを一貫して行い、「色・形・性能」にこだわった多品種・小ロット生産を実現しています。
Small shelving system
単なるタイル以上の存在として、壁からわずかに突き出す形状は、オブジェを置くための棚として機能します。リズミカルに並べても、単独のアクセントとして配置しても、空間に奥行きと立体感をもたらします。家庭での使用にとどまらず、商業空間でも活用でき、ショップやギャラリーで商品を展示したり、例えばタイルコレクションをショールームやポップアップで展示するのも良いかもしれません。
協働メーカー:有限会社丸仙化学工業所 寿山
1898年(明治31年)に食器の製造工場として創業し、現在四代目。二代目の1930年(昭和5年)頃よりタイルの生産を開始。創業当初から自社で原料の粉砕・調を行っており、大型粉砕機を導入した現在も、創業時の土の風合いを大切にした調合を続けている。現在でも古来から伝わる「タタラ成形」を中心に、約一割は陶器の製造を行なっている。陶器づくりで培った技術を活かし建、築物に永く調和し、愛され続ける商品づくりに取り組んでいる。
アンソニー・ゲクス(Anthony Guex )
スイス・ローザンヌを拠点に活動するプロダクト/インテリアデザイナー。家具職人、木材産業で7 年以上の経験を経て、HEADGenèveとECAL で学び、現在は自身のスタジオとECAL の副担当官として活動し、New Tendency、 Okro、 Tectona、 Ecal、Fogo Island Workshops など国際的なブランドとのコラボレーションを多く手掛けている。@anthonyguex https://anthonyguex.ch/
Tableware collection
このプロジェクトでは、磁器という素材そのものを探求し、私たちは常日頃どのようにそれと向き合っているのかを再考したいと思いました。伝統的に磁器は薄く成形されることが多いため、実際は丈夫ですが、繊細で壊れやすいものと認識されがちです。そこで私はあえて逆のアプローチでデザインしました。より密度とボリュームを持たせることで、その認識を変えようとしました。磁器の、より重厚で彫刻的な一面を引き出す試みです。 形状は意図的にシンプルにしていて、幾何学的かつミニマルに設計されています。建築的なボリュームを想起させながらも、親しみやすく、日常に取り入れやすいデザインです。直線と柔らかな曲線が交わり、静かでバランスの取れた緊張感を生み出します。この対比によって、それぞれの作品には独自のリズムと視覚的なダイナミズムが生まれ、日常空間の中でも自然に存在感を放ちます。
協働メーカー:株式会社深山
地域に培われた上質な白磁素材を、精緻に成形し高温で焼成する“ものづくりの技術”を受け継ぎ、1977年、美濃焼産地の中でも輸出用洋食器の生産が盛んである岐阜県瑞浪市に創業しました。現在は、その技術を基礎として、「うつくしいうつわ」をテーマに、“やきものの魅力”と“道具としての機能性”が調和した、日常の暮らしのためオリジナルデザインの器を開発・製造しています。
プログラム参加について:私たちが得意としてるものづくりの一つが、「ポット」などお茶関連のアイテムです。その得意としてきたものづくりが、今回のプログラムを通してアンソニーさんと一緒に開発をすることで、スイスのライフスタイルの思想と関わりを持てたことが嬉しいです。また、今まではどうしても日本文化をベースとしたデザインによる製品が中心で、知らず知らずのうちに固定観念のもとものづくりをしていましたが、その殻を破る機会となりました。こうした機会を頂けた事を感謝しています。
TAJIMI CUSTOM TILES
TAJIMI CUSTOM TILES (以下、TCT)は、タイルの日本最大産地である岐阜県・多治見で、2020年にスタートしたオーダーメイドタイルのブランドです。複雑な形状から微妙な色調整まで、リクエストに合わせて制作するフルカスタムオーダーと、豊富なパレットから、形、表情、色味を組み合わせて選ぶセミカスタムオーダーが主軸のサービスです。 パートナーである多治見一帯の個性豊かなタイルメーカーと連携して行うものづくりは、ほかの地域ではあまり見られなくなった伝統的な成形/焼成技術、変化に富む釉薬表現を強みとし、建築家やデザイナーが求めるタイルを少量から実現します。拠点である岐阜県多治見の本社には、プロトタイプの制作やリサイクルタイルの研究開発を行うラボ、TAJIMI CUSTOM TILESギャラリーも併設しています。
プロジェクト参加について:ノエラーニがスイスのアルプスから雪の跡を写しとった手作りのタイルを見本に、量産を想定した製法を選定して試作を繰り返し、かたちにしていきました。美濃地域のタイル産業は120年以上の歴史がありますが、長年培った知識と技術をもってしても、思うような表情や形状が出ず、何度も調整を繰り返しました。スイスのデザイナーの新しいアイデアと、美濃焼のタイル産業を結び、これまでの技術や表現に新たな可能性や広がりが生まれたことをとても嬉しく思っています。
Design with Japan (DWJ)
スイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団と、在日スイス大使館が共同で運営する、協働型レジデンスプログラムです。本プログラムは、新進スイスデザイナーの革新的な力と日本の製造業者とのつながりを築くことを目的としています。プログラムの目標は、異文化間の協働環境を育み、デザインの可能性を押し広げることです。この協働は、一連のプロトタイプ開発、プロジェクト展示、そしてメディアでの発信を通じて具体化されます。
“Design with Japan” edition 2024-2025 選考委員:
松澤剛/株式会社E&Y 代表取締役・大阪芸術大学短期大学部デザイン美術学科教授・グッドデザイン賞審査員
ダヴィッド・グレットリ/クリエイティブ・ディレクター、デザイナー
レティシア・デ・アレグリ/デザイナー
展覧会プロジェクトチーム
展示ディレクション ダヴィッド・グレットリ
プロジェクトマネージメント 山口イレーネ
グラフィックデザイン セバスチャン・フェア
PR 竹形尚子

