スイスパビリオンでは、共同イノベーションについて、没入感にあふれるインタラクティブな旅として体験することができます。愛・地球博(2005年日本国際博覧会)への参加から20年、スイスは同じ政府代表のもと、「ハイジと共に、テクノロジーの頂へ」というタイトルで新鮮かつダイナミックなプログラムを開催します。この物語は、スイスの象徴であるアルプス文化の継承から、世界的に認められている最先端技術とイノベーションの拠点への進化を語ります。日本で世代を超えて愛されているハイジ*がパビリオンの公式マスコットとして登場し、両国の友情を体現します。スイスパビリオンは、すでに強い絆で結ばれている2国間の関係をさらに深める、またとない機会を演出します。特にスイスにとって日本はアジアにおける科学技術の最も重要なパートナーであり、このコラボレーションが将来を見据えた新たな交流のきっかけとなることを目指しています。
スイスと日本の友好関係の永続を願う精神があふれる中、冬休み中にスイスに降り立った日本国際博覧会の公式キャラクターであるミャクミャクが、スイス館の公式キャラクターであるハイジに初めて会いました。二人は仲良く連れ立って、雪化粧された美しいグリンデルヴァルト(Grindelwald)を探訪し、さらには「ヨーロッパの屋根」というべきユングフラウヨッホ(Jungfraujoch)に行きました。
この訪問中に見逃せなかったのが、ユネスコの世界遺産に登録されているラヴォー地区の葡萄畑。二人はワインで乾杯して、近づいている大阪・関西万博におけるスイス館のデビューを祝いました。まもなく、スイス館のハイジ・カフェ(Heidi Café)では、日本の風味をちょっぴりプラスしたスイス料理セレクションとともに、これと同じワインをお楽しみいただき、またとない、フュージョン料理のお食事をご体験いただけます。
ミャクミャクとハイジの二人は今、日本での再会を楽しみにしています!
出展者について:スイスのイノベーションを3つの章で紹介
スイスの大学、研究機関、スタートアップ企業、そして企業による25以上のプロジェクトを、パビリオンの球体展示室3と大阪の中心部にあるスイスネックス・ジャパンの展示スペースで紹介します。 パビリオンをプロデュースするプレゼンス・スイスは、画期的なイノベーションの認知度を高めるため、国際的なプラットフォームを用意し、幅広い観客層の関心を集めることを目指しています。また、世界的な課題に取り組むスイスの役割と、他国間の対話におけるスイスの立場を強調する展示を企画し、展示に向けたプロジェクト募集には、200を超える応募がありました。 本資料では、第1章「Augmented Human(人間拡張)」の出展者を紹介します。第2章「Life(生命)」と第3章「Planet(地球)」で展示されるプロジェクトは、後日、公開予定です。
Deepfakes Mirror
デジタルの世界における信憑性は、高度なテクノロジーによって阻まれ、真実と偽りの境界線が引きにくくなっており、AIはこういった技術をさらに進化させている。
このデモンストレーションのように、ディープフェイクはおもしろいものである一方、非常にリアルで簡単につくれるようになりつつあり、選挙や紛争などの複雑な情勢において影響を与えるようになっている。
スイス連邦工科大学ローザンヌ校(EPFL)は、鑑賞者に注意喚起するためのディープフェイクをつくっており、技術的異常検知、ウォーターマーキング(デジタルコンテンツに見た目ではわからない透かし情報を埋め込む技術)、その他の技術など、ディープフェイクに対する技術的対抗策の開発に取り組んでいる。
Inveel GmbH
インヴィール社は、ロボットに触覚を提供する高精細な感覚をもつ皮膚の開発を専門としている。大きな面積の人工皮膚にナノメートル精度のセンサーを統合する画期的な技術を革新し、多用途で正確なロボットとのインタラクションのために、触覚を向上させている。この先駆的な技術により、軟らかい素材に精密なセンサーを印刷することが可能になり、人体の皮膚そっくりで、物体の存在、手の中の位置、握った時に加えられる力を検出することが可能になった。この技術革新により、細かな運動制御が可能になり、高精度かつ柔らかいロボットハンドが実現し、ロボット工学が大きく飛躍した。
Legged Robots for Space
スイス連邦工科大学チューリヒ(ETH Zurich)は、科学技術分野における世界有数の大学のひとつであり、移動ロボット工学と宇宙科学の両方の専門的研究を進めている同校は、宇宙ロボット工学の未来に革命を起こすのに最も近い場所にあると言える。同校のロボットシステム研究所、地球物理学研究所、ETH宇宙研究所が共同で、地球外惑星の起伏が激しい地形を移動できる高度な脚型ロボットを開発している。
展示では、代表的な2つのプロジェクト「SpaceHopper」と「LunarLeaper」を紹介する。「SpaceHopper」は、小惑星のような重力が小さい場所での移動用に設計された3脚ロボットで、跳躍しながら、安定した姿勢を維持することができる。「LunarLeaper」は月面を歩くために設計されたロボットで、高度な科学計測機器を使って月の溶岩洞の履歴を調査し、月面基地の候補地を特定することが期待されている。
Reconfigurable Robotics Lab
スイス連邦工科大学ローザンヌ(EPFL)のリコンフィギュラブル・ロボティクス・ラボでは、ユニークなロボットシステムの設計、製造、稼働、整備に焦点を当てている。この研究室は、機械的性質の限界に挑戦する新しい製造技術や製造工程を用いて、インタラクティブなロボットシステムを発明することに取り組んでおり、ウェアラブル技術、医療/リハビリ管理システム、パーソナルロボットなどに幅広く応用でき、環境に配慮した、再構成可能で柔軟性をもつロボットをつくりだしている。
RoboFood
RoboFood(ロボフード)は、食品工学とロボット工学を根本的に斬新な方法で融合させることによって、食べられるロボットとロボットのような食品をつくりだす世界で初めてのプロジェクトである。この食用ロボットによって緊急事態下で命を繋ぐ栄養を人々に届けることができ、また絶滅危惧動物にワクチンやサプリを与えたり、食べられるアクチュエーターや電子機器を備えたロボット食品もある。いっぽう、保存状態や安全に食べてられるものを教えてくれたり、保存時の過熱や湿気から守ってくれたり、神経疾患患者の嚥下を助けたり、まったく新しい人間や動物の相互関係を生み出したり、食事摂取量や食習慣に影響を与えたりすることもできる。このような目標を達成するには、ロボット工学と食品工学の原理を学際的に研究する必要がある。従来のロボットが環境を認識し行動を実行する無機物のシステムである一方、そのほとんどが有機物である食品は、消化・代謝されることで生命を維持することができる。ソフトロボティクスの原理と高度な食品加工法が食用ロボットとロボット食品の新展開への道を開き、その結果、人間や動物の健康、社会、環境に新たな機能やサービスを提供することになる。
Soft Robots for the Wild
ナナ・オオバヤシとマックス・ポルツィン、カイ・ユンゲはEPFLの博士課程に在籍し、ジョシー・ヒューズ教授とともにCREATEラボに所属している。CREATEラボでは、複雑で構造化されていない野生環境での使用を想定したロボットの開発に取り組んでいる。 オオバヤシ氏は、柔らかい躯体と流体の相互作用を利用することで、不安定な環境における頑丈かつ効率的な生物規範型ロボット開発を専門としている。航空宇宙工学をバックグラウンドに持ち、アメリア・イアハート奨学生としても知られる彼女は、学際的な視点でロボット工学の発展に貢献している。ポルツィン氏は、北方林、山岳斜面、北極や南極近くの氷河などの極限環境に合わせた革新的で汎用性の高いロボットを設計している。ナショナル・ジオグラフィック・エクスプローラーでもある彼は、ソフトウェア開発と過酷な条件下でのロボットシステム開発に秀でている。ユンゲ氏はソフトロボットとリジッドロボットの設計と制御に重点を置き、ロボットの器用な動作に精通しており、Helix Roboticsの共同設立者として、多様な環境で人間とともに安全かつ効果的に作業できるロボットをつくることに尽力している。
The scent of space
ベルン大学は、NASAのアポロ11号月面着陸以来、宇宙探査のリーダーであり、常に最先端の機器を開発し続けている。展示されるのは、木星の氷衛星を探査するJUICEと、原始的な彗星を探査するコメット・インターセプターという、ESAとJAXAが共同で行った2つのミッションに使用されたベルン質量分析計の模型である。
探査機のカメラが目なら、質量分析計は鼻である。質量分析計は、太陽系の彗星、衛星、惑星を取り巻く原子や分子を「嗅ぎ分ける」。木星の氷衛星には生命に適した海があるかもしれないし、彗星は冷凍保存されたタイムカプセルのようなもので、初期の太陽系を垣間見ることができるかもしれない。
そして、スイスパビリオンの来場者は、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星に着陸したベルン質量分析計ROSINAの測定結果から再現された彗星の「香り」を体験することができる。