量子の次は「脳」? コンピューティング × 神経科学が書き換えるもの image
量子の次は「脳」? コンピューティング × 神経科学が書き換えるもの image

量子の次は「脳」? コンピューティング × 神経科学が書き換えるもの

脳をまねるだけでなく、脳から「育つ」コンピューターがあったら?
チューリヒを拠点とするMaxWell Biosystems社の研究チームが、WIRED Japanの取材に応じました。記事では、人間の幹細胞から作られた生きた神経組織「脳オルガノイド」を使った最先端の研究を紹介。コンピューティングと神経科学が融合し、現在のAIを超える“バイオコンピューター”の未来を予感させます。

チューリヒ発のMaxWell Biosystems社は、まったく新しいタイプのコンピューターを開発中です。その核となるのが「脳オルガノイド」と呼ばれる、ヒトの幹細胞から育てた小さな脳のような組織。これを何千もの微小電極が並ぶ特別なチップ(HD-MEA)に載せることで、脳細胞の信号のやり取りを観察したり、逆に信号を送ったりすることが可能になります。まるで生きた脳細胞と会話するような技術です。

この技術は、脳の研究を大きく変える可能性を持っています。ALSのような病気による脳の変化を調べたり、薬の効果を安全にテストしたりできます。将来的には、患者自身の細胞からオルガノイドを育てて、その人に合った治療法を探す「個別化医療」にもつながるかもしれません。

医療を超えて、これは新しいタイプのコンピューター開発にもつながります。今のAIは大量の電力と巨大な画像処理装置を必要としますが、生きた脳細胞はごくわずかなエネルギーで複雑な情報処理が可能です。MaxWellが描く「ブレイン・プロセッシング・ユニット(BPU)」の未来は、よりスマートで環境に優しい技術、そして「思考するとは何か」の理解を深めてくれるでしょう。

「チップ上の脳神経回路網」についてもっと知りたい方は、WIRED Japanの記事をご覧ください。

写真:Timothée Lambrecq