クリエイティブ・レシデンシー有田2023 image
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クリエイティブ・レシデンシー有田2023

2023年1月より、素晴らしいアイテムを輩出しているスイスのインダストリアルデザイナー、カルロ・クロパットが、「クリエイティブ・レジデンス有田」プログラムの一環として、陶磁器制作を中心とした3ヶ月間の在型創作活動に参加し、4世紀にもわたる陶磁器の伝統を活性化し、地域の活性化と持続可能な社会の実現に貢献することを目的に、佐賀県の職人と国際的なアーティストとの交流や共創を促進しました。

山口浩平作ドキュメンタリー「ARITA - In a land of Terra 焦がれた地で」

カルロ・クロパットの有田での3ヶ月のレジデンスを記録した、山口浩平監督によるドキュメンタリー作品話を公開します(全3話)!

エピソード1

エピソード2

エピソード3

クリエイティブ・レジデンシー・有田

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400年以上の歴史を持つ有田は、日本の伝統的な磁器工芸の中心地の一つです。しかし、近年、有田の人口や職人コミュニティは減少に転じています。スイスのグラウビュンデン州を拠点に活躍するデザイン界の俊英、カルロ・クロパスは、BIG-GAME design、デザインディレクターのダヴィッド・グレットリ、OKRO Design & Craftの創設者ハインツ・カフリッシュら専門家の審査により選ばれ、Vitality.Swissプログラムの支援を受けて、クリエイティブ・レジデンシー・有田に参加することになりました。このレジデンス・プログラムは、佐賀県の職人と国際的なアーティストとの交流や共創を促進し、地域の活性化と持続可能な社会の実現に貢献することを目的としています。

カルロ・クロパスは有田の歴史、自然、文化の中に身を置き、地元の職人たちとともに新作を制作しました。民藝運動の創始者である柳宗悦の「模様やシンボルは、社会が自然や環境とどのように関わっていくかに重要な役割を果たす」という思想にインスピレーションを受け、窯元「李荘窯」と共同で開発したテーブルウェアや茶器のシリーズを発表しました。磁器の器とプリントされたテキスタイルからなるコレクションは、渦巻きのシンボルを中心としたバリエーションによって「動きや成長、そして銀河や私たち自身のDNAを表現しています」とカルロはコメントしています。

2023年3月24日、アンドレアス・バオム大使、ジョエル・カリン・サムブク・ブロイゼ在福岡名誉領事、ジョナス・プルヴァ広報文化部長のほか、レジデンスプログラムの関係者や地域の人々が出席して、コレクションの発表会が開かれました。また、バオム大使はこの日、山口祥義佐賀県知事と松尾佳昭有田町長を表敬訪問しました。三者とも、今回のレジデンスプログラムの成果に満足し、スイスと九州地方の関係がより深まることを期待していると述べました。

美の行為 ― 装飾:自然と調和した存在の象徴

スイス人のインダストリアルデザイナー、カルロ・クロパットの国内初となる個展「美の行為 ― 装飾:自然と調和した存在の象徴」、渋谷の(PLACE) by methodで開催(期間:11月17日~12月3日)。本展はクリエイティブ・レジデンシ―有田でクロパットが2023年1月から3月までの3か月間の滞在時に有田焼窯元の李荘窯との密接な共同作業で制作した作品のコレクションを発表しました。

クロパットは縄文時代からポップカルチャーに至る日本の工芸品を考察し、シンボルの起源や意味、機能について掘り下げました。特に螺旋とその多様な解釈に焦点を当て、鑑賞者を自然と非物質的な世界との再会へと誘いました。

エコロジカルな(自然と調和する)行動の原動力としての装飾の価値を示すことで、この展覧会は環境の持続可能性に関する考察を促しました。クロパットは、人間も含めた生物は限られた生物資源を持つ地球の自然な生命システムの不可欠な一部であることを、鑑賞者に再認識させたいと考えました。「自然は単なる資源ではなく、生きている主体です。自然を尊重し持続可能性を保つことが、人としての理性的な行動と言えるでしょう。」と語りました。

主催   在日スイス大使館 / Vitality.Swiss
協賛   USM U. シェアラー・ソンズ株式会社、クリエーションバウマンジャパン株式会社
助成   サカエ・シュトゥンツィ基金
協力   クリエイティブ レジデンシー 有田、李荘窯、株式会社メソッド、スイス・プロ・ヘルヴェティア文化財団、多摩美術大学

展示物について-お茶を飲む:日常の儀式

有田焼窯元「李荘窯」をパートナーに、クロパットは現代の日常的な儀式とそれに関連するもの、特に「お茶を飲む」という行為に惹きつけられました。実際、クロパットはたった3か月間の滞在中に何と21アイテムもの茶器や道具のコレクションを制作したのです!それぞれのアイテムの形は、球体や円柱、あるいはその組み合わせといった、シンプルで古風なものです。また、いくつかのオブジェは、異なる起源を持つ螺旋状の装飾模様で彩られています。これは、多様な実用的なオブジェに意味の層を加え、私たちの社会と自然を再び結びつけることを意図しています。

デザイナーとしての考察

本展は「美」や「美的行為」(道徳的行為-自らの意志で行う行為)という考え方を通して、無形なもの、近づきがたいもの、幻想的なものといった神秘的な実態、すなわち、美や神話、儀礼を通してうかがえる地、風、水、火といった元素精霊によって息づく世界の理解に寄与することを目標としました。

カルロ・クロパットにとって、周期的に浮かんでは消えるこれらの要素は、季節や美の感覚と結びついているものです。彼の解釈は、はかなさを美の理想とする日本の価値観と共鳴しています。そこでクロパットは、自己鍛錬を体現し超越的な体験を提供する、凝縮された美の儀式である茶道に焦点をあて、日本的・仏教的な振る舞いにおける神話やシャーマニズムとの親和性を描くことにしました。

この展覧会では、クロパットが有田で制作した磁器作品に加え、シンボルの起源、意味、機能、特に螺旋に関するクロパットの考察も展開しました。クロパットはこの研究により、世界中の先史文化における螺旋の存在を探求し、その起源(自然の観察、薬物や瞑想による幻覚、内因性のイメージパターン)とシンボルの意味や機能に関するさまざまな説明を試みました。螺旋は、循環する時間、繰り返される季節、春と秋の収穫祭における地と水の精霊の帰還、水の精霊の守護者である蛇などを象徴します。

本展では、縄文文化からポップカルチャーに至る日本の工芸品を通して、装飾、特に螺旋の歴史をたどりました。クロパットは民藝運動の創始者である柳宗悦の哲学、特に、社会が自然や環境とどのように関わるかにおいて、模様やシンボルが重要な役割を持つという考え方にインスピレーションを受けたと言います。

カルロ・クロパット(Carlo Clopath)

スイスのインダストリアルデザイナー。アルプス山脈にあるアトリエで、主にヨーロッパ、日本、北米の職人、国際的なメーカー、研究機関との共同で日常品を主に制作。伝統と革新が調和する穏やかで明白、親しみやすい作品を特徴とする。制作中は素材、工程、品質を限界まで良いものとするために、アイデア、素材、技術(テクノロジー)の検討・試作を数えきれないほど繰り返す。ECAL/ローザンヌ美術大学で精密さと革新性に基づいた教育(スイスの伝統)を受ける。また、コペンハーゲンのセシリエ・マンズの下で、職人技と流動的な線描に基づいたスカンジナビアの手法を体験(2012-2013)。さらに、コペンハーゲンのStatens Værksteder for Kunst(デンマーク・アート・ワークショップ)でのレジデンス。その後、初のソロプロジェクトとして木、磁器、漆でできたキッチン用品のシリーズを発表。それ以降、日本の職人・製造業者とのプロジェクトを多く進める。コペンハーゲンのDesignmuseum Danmark(デンマーク)、ミラノサローネ(イタリア)、SHOWCASE(日本)などで作品を展示。最近では、ボルグマン&クロパットの木製家具コレクションでスイスデザインアワード2023(2023年6月)を受賞。カルロ・クロパットがデザインした、株式会社セキサカ(本社・福井)の新しい食器コレクション「SARO」は、2023年6月に発売され、グッドデザイン賞2023を受賞。

李荘窯業所

有田焼を代表する窯元のひとつ。4代目当主の寺内信二が率いる。デザイン性と高い技術力に定評があり、有名シェフやレストランとのコラボレーションも多い。