スイスの活力と多様性を示す直接民主制を、日本の学生に体験してもらう学校交流事業を麹町中学校の協力のもと、在日スイス大使館主催で実施しました。Vitality.Swissのプログラムの一環として行われる本プロジェクトでは、生徒たちがイニシアチブを検討・発議し、投票することで、スイスとその直接民主制、政治システムを学びながら、建設的な議論を行ってもらい、政治参加についての理解を深めることを目指しました。
スイスの政治システムの特徴である直接民主制は、国民が連邦政府の決定に意見し、スイスの憲法改正を提案することを可能する制度です。多様な言語と文化が共存する連邦国家スイスにとって、幅広い政治への参加の機会はとても重要です。1848年以降、連邦国家スイスでは、共同決定の機会が拡充されてきました。様々な方法によりできるだけ多くの少数派を取り入れることが可能となり、これはスイスにとって重要な政治的特徴となりました。
その直接民主制の柱となっているイニシアチブ(国民発議)を学び、実際に体験することにより、スイスの知識や政治システムを学び、さらに建設的な議論を行い、政治参加についての理解を深めることを目的とし、千代田区立麹町中学校とともに「Make Your Own Initiative」プロジェクトを実施しました。
160人を超える生徒が参加したイニシアティブ(国民発議)のシムレイションは、3つのセッションに分かれて行われました。最初のセッションでは、スイスの直接民主制とイニシアチブについての説明の後、東京・千代田区での生活を改善するためのアイディアを出し合いました。その後、小グループに分かれて案を練り上げ、1クラスにつき1つの案を選出しました。最終日には、各クラスから数名の生徒が全学年の前で提案を発表しました。その後、メリット・デメリットについて話し合い、最終投票が行われました。
生徒たちは、グループ内で積極的に発言が相次ぎ、会場が熱気で包まれました。生徒たちは素晴らしいイニシアチブを考え出し、投票で5つのアイデアを選出しました。その中には、区が所有する建物の改修案や、地域の政治問題に関する意見表明の簡素化などが含まれていました。投票結果は、千代田区立中学校生徒会役員を通して、千代田区の生徒会サミットの資料として活用されるということで、生徒たちも熱が入り、様々な意見が出されました。最後に、当館による講評では、政治担当官のレア・ゲルスターは、「民主的な参加によって、民意が反映され、社会が良い方向に変わります。参加するということは、一方的ではなく、相互に行われます。つまり、自由に意見を表明し、提案することが出来るということでもあり、同時に、他の人の意見に耳を傾け、たとえ意見が異なる場合でも、常に敬意を払うということでもあります。これは政治だけでなく、日常生活で家族や友人と話すときにも大切なことです。」と述べました。また、「オープンな議論をし、誰もが分の考えを言えるようにするには、時間と忍耐と勇気が必要です。私たちは互いをよりよく理解し、多様な問題の解決策を共に生み出すことができます。たとえ意見が違っても、私たちはそこから学ぶことができるのです。」と締めくくりました。
このユニークな体験に参加してくれた生徒と先生に心から感謝します。彼らの取り組みが地域社会に与える影響を見るのが楽しみです。生徒たちが、スイスの直接民主制に触れ、色々なイニシアチブに積極的に取り組むことの重要性を感じてくれたら幸いです。