輸送は、世界レベルで最も大きなCO2排出源であります。スイスでも同様で、運輸部門が二酸化炭素排出量全体の3分の1以上を占め、産業部門と一般家庭(それぞれ約20%)を上回っています。環境への影響を削減するために、スイスやその他の国々は、二酸化炭素排出ゼロの輸送手段に切り替える必要があります。電気自動車や水素自動車は、再生可能エネルギーで発電されたものであれば、この目的に特に適しています。特にスイスの企業は、このような大きな課題に対する解決策を見出しています。
スイスは公害問題を強く意識しており、2022年までに電気自動車の新規登録台数を15%増加させるという電気モビリティのロードマップを発表しました。2018年から登録台数は大幅に増加し、2019年には約11%に達しました。スイスは主要な自動車生産国ではありませんが、特に市街地走行に適した革新的なデザインの小型モジュール車を生産しています。また、水素を動力源とする輸送手段の開発にも積極的に取り組んでおり、Stadler RailのFLIRT H2列車など、革新的なソリューションがすでに開発されています。
公共交通機関では、スイスは世界でも有数の鉄道利用率を誇ります。一流のインフラと世界有数の高密度の鉄道網を持ち、その動力の大部分を水力発電所から供給される再生可能エネルギーでまかなっています。また、スイスは、バス停ですばやく非接触チャージができるABBとTOSAが共同開発したバスや、HESSが製造した電子バスなど、都市の公共交通における重要な技術革新も行っています。
Softcar
初の完全エコカー
初の完全エコカー植物由来のプラスチック素材と高度な複合材料を使用して設計され、完全にリサイクル可能なソフトカーは、世界初の完全なエコカーです。スイス製で、100%電気で動くこの超軽量シティー・カーは、主要都市近郊の組立工場での大量生産が予定されており、安全性や走行性能に妥協することなく、わずかな投資で製造することができます。今日の平均的な自動車の部品数が40,000点であるのに対し、この先駆的な自動車の部品数は2,000点以下です。部品点数が減ることでリサイクルが容易になり、天然資源の節約にもつながります。ソフトカーのデザイナーは、生産時から使用中、そしてライフサイクル終了時のリサイクルに至るまで、カーボンフットプリントを削減する自動車を考え出しました。開発チームは1990年代に考案されたシティー・カー「スウォッチ・モービル」のコンセプトからインスピレーションを得て、現在のテクノロジーと最新の部品開発を加えました。究極のシティー・カーであるこの車はグレー・エネルギーを削減する極めて合理的なデザインの賜物です。2023年に量産が始まりました。
Designwerk
エレクトロモビリティと商用車:開発、走行、充電、蓄電
Designwerk社は少量生産の電気トラックや急速ポータブル充電器、メガワット・バッテリー型急速充電ステーション、モジュール式高電圧バッテリー・システムを開発・製造しています。同社はスイス初のオール電化ごみ収集車を開発した企業で、他に類を見ない1,000kWhのバッテリー容量と最大630kmの走行距離を誇る電気トラックを製造しています。同社の充電器はヨーロッパの自動車メーカーに広く採用されています。モジュール式トラクション・バッテリーは、中小規模の自動車メーカーが事業を拡大したり、電動モビリティに事業をシフトしたりすることを可能にします。2008年の設立以来、Designwerkは革新的な製品とプロジェクトを通じて電動モビリティを推進し、持続可能なモビリティをより一般的なものにしています。同社はモビリティ分野における広範な専門知識を有し、複雑な技術要件を伴う特殊なアプリケーションや、各顧客へのオーダーメイドのソリューション開発に注力しています。2021年から、ボルボ・グループがDesignwerk社の株式を保有しています。2024年現在、Designwerk社の従業員数は220名で、本社があるスイスのヴィンタートゥールとドイツのロットシュテッテンに拠点を置いています。
Leclanché
海運業界の新時代
エネルギー貯蔵ソリューションのリーディングカンパニーであるスイスのLeclanché社は、世界中のさまざまなインフラや車両向けのバッテリーシステムを設計・製造しています。その中には、2019年からデンマークのソビー港とフィンシャフ港を往復する世界最大のオール電化フェリー「エレン」も含まれています。このフェリーはLeclanchéのバッテリー・システムを動力源としており、船内に燃料も排気ガス臭もないゼロ・カーボン輸送を実現しています。このバッテリーシステムにより、同フェリーは41kmの航行が可能となり、これは他の電化フェリー航路の7倍の長さです。「エレン」は最大200人と約40台の車両を運ぶことができます。この電化フェリーとその非常に革新的なバッテリーシステムの一部はスイスで開発されましたが、フェリー航路で使用されるディーゼル燃料の削減に貢献しています。
Green Motion
電動モビリティをより身近にする充電ステーション
2021年にイートン・グループの一員となったグリーン・モーション社は、自宅や公共の場に設置する、電気自動車(EV)用のターンキー方式の充電ステーションを設計・製造しています。また、充電の課金を含め、関連ネットワークを管理するためのソフトウェア・プラットフォームも提供しています。これら2つの補完的ではあるものの分離可能なサービスにより、同社は市場に2つの道を開いています。ほぼすべてのEVプラグに対応する同社の充電器は、すでに中国、インド、イスラエル、米国など多くの国に設置されています。さらに、このスイス企業は現在、電気航空機用の充電ステーションを設計しており、これは広く利用される目処が立っています。また、自動車産業向けに車載充電器の設計も行っています。